詩集 ハタチ

水流遡行

 夏のうねりに導かれて
 繰り返す遠くの耳鳴りと共に
 身体は弧を描いて
 私の水面(みなも)へとダイヴする

 薄暗い木造の洞窟で
 きらきらと光る宝石のような
 駄菓子たち
 汗ばんだ五十円玉の重さ

 弾むスーパーボール
 どこまでも高く放ったパチンコ
 太陽に打ち返されて
 青いどんぐりの雨が降った

 空がはじけて目をつぶれば
 塩素の鼻をつく匂い、ホイッスルの音
 焼けたコンクリートに
 抱きついて見入った水たまりの水晶

 浮かび上がってくる記憶の泡を溯り
 たどり着いた核から
 脈動する源泉となって溢れ出すもの

 すべては
 確かにここに在ったのだと

 全身を貫いた
 やわらかく
 あたたかく
 鮮烈な
 光