少年犯罪
理由などなかったのだ
少年はからっぽで
彼を形作る薄い膜の下には
空洞があるばかりで
真っ黒な風がよどんでいたのだから
理由すらなかったのだ、彼には
今まで少年を動かしていたのは
彼の周りの空気が固まったゼリーで
様々な思惑に味付けされ
濁りきっていたのだから
よどんだ風と濁ったゼリーとが
薄い膜を等しい力で押し合って
少年は存在していた
危うい緊張の中で
膜は限界までのびきっていたのに
誰かが少年に近づきすぎて
ゼリーがぷるるんと揺れて
均衡が崩れ
弾け飛んだ膜から解放された風が
無差別に
目についたものをなぎ倒し始める
もう少年はいない
そこにあるのは
ゴウゴウと渦巻く
赤黒い風だけ
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