詩集 ハタチ

焦燥

 時計の秒針が
 六億三千万回の秒読みを終えようとしている

 開け放した窓から正対する
 ひしゃげた太陽が
 一秒ごとに膨れ上がり
 地球を圧迫し
 体内浸透圧までをも狂わせてゆく

 巨大な瞳に睨まれて
 不快な涼しさと、せつない灼熱感が入り乱れ
 自分が床の上に立っているはずだという
 感覚すら
 不確かなものとなる

 浮遊する私を置き去りにして
 太陽は
 明日を約束せずに消えた

 濃くなる闇の中
 鼓動と共にせり上がってくる濁流が
 うず巻きながら私の眩暈を誘う

 時代

 都合の良い言葉に
 ハイヒールのリズムのような心地よさを感じて

 自分ではない誰かに期待し
 自分ではない誰かに失望し
 自分ではない誰かを責め
 メビウスの輪

 水しぶきは口蓋を叩き続け
 いつしか身体の奥底に宿った熱で膨脹し
 脳天までを満たして
 窒息しそうになる

 私は何をしているのだ