単発詩 水たまり

水たまり

ぬかるんだ大地で
濁った水たまりが空を見上げていた

流れ込んでくる雪解け水が
絶え間なく泥の対流を生み出し
透き通る暇などない

上空を知らん顔で流れる風
誇らしげな青さ、輝き
ただ憧れるしか出来ない水たまりの視界に
白い雲が飛び込んできた

流され、ちぎれても
形を変え
歩み続ける
不定形の強さ

ああ…と
水たまりの内側がざわめいた

全ては決して無駄ではなく
今、濁った水たまりである事の
存在意義

万物は流転し
純化した思いだけが空へと還る
水たまりの記憶は地中へと眠り
春になれば
ささやかな芽吹きがあるだろう

水たまりは、いつの日か雲になる