詩集 蒼い曇り硝子

思考停止プログラム

 テレビからあふれる大音響
 町は色の洪水に呑まれ
 人は皆、笑い声のテープをリバースモードで再生中
 “タノシイ”と
 言い聞かせなければ不安になる
 自分は楽しい、みんなも楽しんでいる
 では、なぜ笑い続けなければならないのだろう

 考エレバ不安ニナル
 考エテハイケナイ
 考エルナ!

 …プログラムが実行され
 止まってしまった心の中で
 壊れたオルゴールが鳴りやまない
 耳をふさいでも聞こえる四拍子のワルツ
 ならば、いっそそれに合わせて踊ればいい
 赤い靴がすり切れるまで

 プログラムを拒否した人間(ハード)は
 恐怖と戦うリスクを負わされるけれど
 僕はオルゴールと踊るほうが怖いから
 欠陥品と言われたってかまわない

 自分が異常だと知っている僕は
 本当は誰よりも正常なのかもしれない

 狂ったソクラテス
 人間(にんげん)で在るために
 恐怖という名の毒杯をあおごう