詩集 蒼い曇り硝子

寒月夜(かんづくよ)

 碧空に風波打つ
 月が泣いている

 満月に少し足りない溶けた楕円が
 樹の枝に寄りかかり
 うつむいている

 月の傍らで
 枝先にしがみつく木の葉がいとおしい
 必死な姿が、強さが
 うらやましい

 風走り
 月が落ちていく

 青白く発光する町並みが
 寒さに震えている
 凍える町を覆う雪だけが暖かく
 耳が痛くなるほどの静寂を
 やさしく包み込み、癒している
 天空のよるべなき魂を待ちながら

 風走り
 月が落ちていく

 銀の月と銀の雪
 黎明にそれらが出会うまで

 哀しい空に月は泣く