夜桜 夜気がざわめく 空気のとろみが増し ゆうるりと肌にまとわりつく芳香 樹々の羊水の中でたゆといながら 機を窺っていた魔性が 幹をつたい 蕾を押し広げ 闇に融け込んだ瞬間 艶 さしのべられた腕 焔 指先がいざなう 怨 月影の鼓動 宴 魅せられて 月に、桜に、夜に酔う ひときわ濃い闇の中心に在って 嫣然とたたずむ 極上の妖
←BACK・NEXT→
1、天啓 2、砂の尖塔 3、私の中の私 4、白鷺 5、地雷〜Voiceless Screaming〜 6、1945年、夏 7、予言 8、神々の視線 9、彗星〜百武が訪れた夜〜 10、夜桜 11、気海 12、釧路