詩集 神々の視線

私の中の私

 帰りたいとは思わない
 私が一人だったあの頃へ

 手は何の疑問もなく私のものであり
 両手を重ねても
 右手が左手に触れているのか
 左手が右手に触れているのか
 考える必要はなかった

 今はつらい時に笑いたくなる
 それは自嘲だったり、乾いた笑みだったりもするけれど
 それでも笑える『私』がいる

 今は嬉しい時に泣きたくなる
 声になることも、涙を流すこともないけれど
 ちゃんと泣ける『私』がいる

 どんな暗闇にだって光は見出せる
 一人目の私が絶叫しても
 二人目の『私』がつぶやいてくれる
 「反省はしても、後悔はしない」

 書き記す言葉の何十倍をしゃべり
 口にする言葉の何百倍を思考する
 二人目の『私』に、乾杯!