詩集 神々の視線

砂の尖塔(ミナール)

 そこが砂漠だという事すら気づかずにいた

 何かを築き上げたくて
 証がほしくて
 免罪符を手に入れたくて
 必死に積み上げてゆく
 足場を形作るはずのものでも
 上へ上へと

 太陽がどれほど遠いかも知らず
 ふと振り返れば
 築き上げてきたものは
 広大な砂漠の中の
 小さな砂の尖塔(ミナール)

 高さを見せつけたかったのは
 脆さを悟られないため
 塔の存在意義を疑った時にはもう
 オアシスまでの道のりはあまりに遠い

 神はバベルの塔を
 雷(いかずち)で打ち据えられた
 砂の塔は
 指先でつついただけで
 ほら
 足元から崩れてゆく