詩集 神々の視線

彗星〜百武が訪れた夜〜

 澄んだ氷の夜に
 彼方からの旅人は
 自らを糧に
 けぶる光輪に身を包み
 闇をも蒼く染め
 無心に天を翔け続ける

 永劫の旅人よ
 貴方の瞳には何が見えますか?
 地上の小さな営みなど
 貴方は笑うかもしれない

 己の運命に疑問を持つ事もなく
 定められた軌跡をたどる貴方は
 ちっぽけな存在が
 流れの中で
 もがき、あえぎ、抜け出そうとするのを
 愚かしいと思うのだろうか

 人もまた
 己を見つけるために生涯を駆ける旅人
 いつ果てるか知れぬ道を進むしかない運命を
 嘆きながらも前を見据える旅人

 永劫の旅人よ
 貴方の瞳には何が映っていますか?
 その胸に
 人の心の光は届くのでしょうか?