詩集 神々の視線

釧路

 風の色が五感をくすぐって
 私は
 初めて荒野に出た仔猫よろしく
 全身の毛先を緊張させ
 精一杯のくしゃみをする

 水から上がりたての髪のような空気に
 がんじがらめになり
 ガチガチと立ちつくす、海辺
 視線は平行にどこまでも飛んで行ける

 山にくるまれて育った私の足は
 霧にとらわれて動けない
 立ちつくす

 深い藍色の海の上
 視界いっぱいの色のグラデーション

 夕闇のスペクトル
 空のふちに広大な虹を見つけた