詩集 神々の視線

神々の視線

 おてんとう様が神様だった頃
 この国では
 たくさんの神々の眼が
 人々を導いてきた

 恵みを感謝し、祟りを畏れる心で
 神々を感じる事が出来た
 偉大な相手への恥ずかしさも
 不可思議への恐怖も
 人が本能で知っていた時代

 謎が解き明かされるたび
 徐々に薄れていった神々との絆
 科学が人の心を支配し
 すべてが数式化された現代

 竜神も天狗も
 あまたの魑魅魍魎さえも
 ネオンの街には住めず
 何処(いずこ)かへと去った
 残ったのは人の心の闇に住む鬼だけ

 神々の眼から「自由」になった人々から
 さらさらさらさら
 何かが
 少しずつこぼれ落ちてゆく

 神々の視線を見失った時代
 僕らはどこへ行くのだろう