詩集 神々の視線

1945年、夏

 青白い光に飛び込んだ蜉蝣が、ジジ…と音を立てた
 一瞬で崩れ去った彼の叫びは
 人の耳で聞き取るには小さすぎて
 それでも、燃えつきるあの命は
 無数の稲妻となり続ける

 人である私がそれを笑うのはおこがましい
 人である私がそれを泣くのは偽善である
 幾つもの輝きの群れは消えゆく魂
 ただひたすらに光を求める者よ
 声は聞こえずとも
 貴方の心の叫びが痛い

 ひたすらに光を求める者よ
 人もまた青白い光に包まれた事があるのです
 彼らは一瞬で影となった
 永遠に大地に焼きつけられた罪の刻印
 どんな絶叫も
 どんな涙も
 あの黒い大地では
 厚い雲に遮られて消えていった

 忘れてはいけない、あの夏を

 ただひたすらに光を求める者よ
 愚かな人の子を笑いますか?

 ジジ…という音
 心の叫びが痛い